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2024.04.19

懲戒解雇の会社側のデメリットとリスクの回避策を弁護士が分かりやすく解説!

懲戒解雇の会社側のデメリットとリスクの回避策を弁護士が分かりやすく解説!
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村木 亨輔

弁護士
虎ノ門法律経済事務所 神戸支店長
法律が日々の生活に関わることは、意外と多くの場面であるものです。その時、どのように対応するかによって、結論が大きく変わってくることも少なくありません。
私は、悩みを抱えてご来所された方に対し、より良い道しるべを提供させていただくべく、仕事に取り組む所存です。

1 懲戒解雇とは

例えば、従業員が犯罪行為により逮捕されてしまった、繰り返しの面接を行ったうえで能力が高いと判断して中途採用した従業員の能力が思ったほどなかった、業務命令に従わない、他の従業員に対しセクハラやパワハラをする、人間関係を悪化させて業務に支障を生じさせる等、労働者が何らかの問題を起こした場合、使用者の皆様としては、懲戒解雇を筆頭に懲戒処分を下すことを検討されることもあるでしょう。

では仮に懲戒解雇を選択して処分を下した場合、使用者の皆様にはどのような問題が起こり得るのでしょうか。

以下では、懲戒解雇を行う場合、使用者としては頭に入れておかなければならないポイントについて解説していきます。

(1) 懲戒解雇とその他の解雇の違い

本題に入る前に、解雇の種類についてご紹介します。

労働者との雇用関係を終了させる効果を生じさせるものとして、懲戒解雇以外に、普通解雇や整理解雇があります。普通解雇とは労働者の能力不足や協調性が不足していることなどを理由として労働者を解雇することです。整理解雇とは、経営不振など従業員数を削減する必要性が生じたこと等により一定数の従業員を解雇することです。

これに対し、懲戒解雇とは、懲戒権の行使を伴う懲戒処分の一種で、労働者による企業秩序の違反行為に対し、使用者によって課せられる制裁罰といえます。

しかし、独立対等な契約の当事者であれば、本来、使用者が合意なく一方的に労働契約関係を終了させることはできないはずです。それでは、どのような理由から使用者には制裁罰としての懲戒権の行使が認められているのでしょうか。

最高裁判所は、裁判例において、懲戒権を行使できる法律上の根拠を以下のように説明しています。

■懲戒権とは企業秩序維持のために認められるものです!

関西電力事件判決(最一小判昭和58年9月8日判タ510号97頁)

「労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種の制裁罰である懲戒を課することができる」

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つまり、労働者の問題行動により企業秩序を維持できなくなり、企業の円滑な運営を図ることができなくなってしまうことを防ぐため、法律により使用者側に懲戒権の行使が認められているのです。

他方、使用者による行き過ぎた懲戒権行使を防ぐ観点から、懲戒権の行使には一定の限定が付されています。

■就業規則の種別および事由の定めと、労働者への周知

フジ興産事件判決(最判平成15年10月10日 労判861-5)

「使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する(最高裁昭和49年オ第1188号同54年10月30日第三小法廷判決・民集33巻6号647頁参照)。そして、就業規則が法的規範としての性質を有する(最高裁昭和40年オ第145号同43年12月25日大法廷判決・民集22巻13号3459頁)ものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。」と判示しています。

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以上のように、最高裁判所は、使用者には企業の円滑な運営を図るために企業秩序違反行為を理由とした懲戒権の行使を認めていますが、使用者が懲戒権を濫用しないように懲戒の種別と事由を定めた就業規則の作成と、その就業規則の周知手続を必要とする立場をとっています。

こうした判例の立場を踏まえ、過去に労働基準法の改正や労働契約法の新設がされ、労働契約法15条では、使用者の懲戒権が明文化された一方で、懲戒権の濫用となる懲戒処分は無効であることが定められました。

労働契約法15条

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」

このように、使用者の懲戒権は法律上の根拠に基づき一定の制限のもとに認められていますが、一方で、懲戒権を行使した際、特に懲戒解雇の際の労働者の不利益はとても大きいといえます。

未然にトラブルを防ぐためにも、使用者は懲戒解雇を含めた懲戒権行使の際には慎重な判断が必要です。

(2) 懲戒解雇の際の手続的な注意点(解雇予告手当を支払わなければならないケースあり

■解雇予告と解雇予告手当について

労働基準法20条1項は、使用者は、原則として、労働者に対し、少なくとも30日前   に解雇の予告を行う(解雇予告)、若しくは30日分以上の平均賃金 (解雇予告手当)を支払わなければならない旨定めています。

■解雇予告手当を支払わなくてよい場合

一方で、労働基準法20条1項但書きによれば、「労働者の責めに帰すべき事由に基づく場合」には、例外的に解雇予告を行ったり、解雇予告手当を支給しなくてもよいこととなっています。

労働基準法20条1項

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。

ここで、懲戒解雇はそもそも労働者側に責任があることを前提とした解雇ですので、懲戒解雇であれば、すべてのケースにおいて、解雇予告や解雇予告手当を考慮することなく即時解雇ができるようにも思えます。

しかし、必ずしもそうではないのです。

■解雇予告除外認定とは?

労働基準法20条3項が準用する同法19条2項においては、解雇予告を行わず、かつ解雇予告手当を支払わない場合には「行政官庁の認定」(「解雇予告除外認定」と言います。)を受ける必要がある旨定められています。

※ここでいう行政官庁とは、労働基準法施行規則第7条において所轄する労働基準監督署長と定められています。

■解雇予告除外認定の基準とは

その上で、解雇予告除外認定を受けるためには、労働基準法20条の保護を与える必要のない程度に「重大又は悪質なもの」である必要があります。

具体的に、「極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑事犯に該当する行為があった場合」や「原則として二週間以上正当な理由もなく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」等です。

つまり、懲戒解雇の要件と解雇予告除外認定の要件は異なるものであり、懲戒解雇が(労働契約法上)有効であっても、解雇予告除外認定が受けられないケースがありますので、注意する必要があります。

なお、解雇予告手当の未払いによって、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課される恐れがあります(労働基準法119条)ので、一層の注意を要します。

(3) 懲戒解雇以外の退職を伴う解雇(諭旨解雇)について

また、退職に伴う懲戒処分としては、懲戒解雇の他に諭旨解雇があります。

諭旨解雇は、懲戒解雇よりも処分としては一段階軽いものです。

諭旨とは、「趣旨を諭して告げる」という意味で、諭旨解雇は、通常、従業員に退職勧告したうえで退職届を提出させたうえで解雇扱いとする、あるいは退職金の全部または一部を支給することを前提とした解雇を意味します

これに対して、懲戒解雇の場合、退職届の提出を前提としませんし、(必ずしも退職金の不支給や減給となるわけではないものの)、退職金についても不支給または減給となることが多いです。

そのため、使用者はこのような効果の違いやそれを選択した場合のデメリットなどを踏まえたうえで、ケースによっては諭旨解雇化懲戒解雇からの選択を迫られることもあります。

(4) 懲戒解雇する際は慎重な検討が必要

労働者は懲戒解雇をされることにより、単に雇用契約が終了するに留まらず、退 職金が支給されなかったり、あるいは再就職先に(前職にて懲戒解雇されたことを言わずに入社した場合)入社後に懲戒解雇が判明した場合、経歴詐称として懲戒解雇される可能性がある等、大きなリスクを抱えることになります。

このことから、使用者が懲戒解雇をする場合、労働者からの反発が起こりやすいことを意識しなければなりません。

そのため、使用者としては、懲戒解雇を選択せざるを得ないにせよ、処分を下す前に、予め、入念に準備や対策を取っておくことは不可避と言えますし、処分として懲戒解雇を選択すること自体、適切であるかについても、慎重に検討する必要があると言えるでしょう。

 

2 懲戒解雇の会社側のデメリット

懲戒解雇は企業の円滑な運営に資するという点で会社経営には必要なこととはいえますが、一方で、慎重に行わないと、使用者側にデメリットもあります。そこで、どのようなものがデメリットとして想定できるのかについて具体的にご紹介します。

(1) 懲戒解雇そのものが争われること

(ア)法的紛争が生じること自体のリスク

懲戒解雇は懲戒処分の中で最も重く、また、すでに述べたように労働者が大きな不利益を被るものです。そのため、懲戒解雇された労働者が、弁護士に相談する等し、その結果、法的紛争に発展するケースは少なくありません。

なお、労働者から想定される具体的な請求としては、労働者であることの地位確認や懲戒解雇をされた後の賃金(「バックペイ」と言います。)を支払うよう求めることが考えられます。

また、労働者は、懲戒解雇が違法であるとして不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を請求してくることもあります。

過去に裁判で争われた事例では、懲戒解雇が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合や懲戒解雇が著しく不合理であり社会通念上相当なものとして是認することができない場合などに、不法行為が成立し、使用者が金銭的な賠償責任を負うとしたものがあります。

一方で、使用者としては、このようなリスクを負いつつも、一度懲戒解雇をした以上は、社内の混乱を避け、あるいは経営判断が不適正だったことを認めないために、解雇を撤回して労働者を復職させることも難しいものと思われます。

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■紛争が長期化するリスク

このように、労使それぞれが強硬な態度を採らざるを得ない結果、裁判外等で話し合いによる解決をしようとしても不調に終わり、その後労働者が裁判所を介入させた労働審判や訴訟手続などを選択することが想定されます。その場合、解決まで、相応の時間を要することになるのです。

(イ) 復職させたうえで、しかも裁判終了まで長期間のバックペイを支払うことになるなど、会社が多大な経済的損失も負うリスク

仮に懲戒解雇の紛争が裁判などに発展したとしても、使用者としては、主張が通りさえすれば時間がかかったとしても、ダメージが大きくなることは一定程度防げるのではないかと思います。

他方、労働者の主張が通ってしまった場合のデメリットは計り知れません。

労働者の地位確認請求が裁判等により認められてしまった場合、労働者との雇用契約が維持されますので、労働者を復職せざるをえないだけでなく、懲戒解雇後の未払の賃金(バックペイ)を原則として一括で支払う必要があります。

裁判が始まってから終了するまで、2年以上かかることもありますので、その場合、2年以上の賃金(賞与含む)を支払ったうえでしかもその労働者を復職させることになります。

このように、労働者の主張が通ることによるリスクは計り知れません。

(ウ) 企業として、対内的・対外的に信用を失う恐れがあること

また、労働者からの請求が裁判等により認められてしまった場合、その他にも多くの問題が生じます。

まず、対内的(社内的)なリスクとして、懲戒解雇が無効と判断された場合、他の労働者にとっても悪影響が及ぶことは明らかです。使用者の主張が通らなかったのですから、使用者の指揮命令系統に疑問を持たれる恐れがあるとも言えます。懲戒解雇の目的が、企業秩序の維持を図ることを含んでいることは忘れてはいけません。

さらに、対外的(社外的)には以下のようなリスクがあります。

■イメージの回復は困難です!!

労働者からのリークや、裁判にまで発展した場合に紛争がマスコミに知られ、その結果、取引先や一般消費者に悪印象となってイメージダウンし、企業ブランドの低下や取引先の喪失など、様々な弊害が生じるおそれもあります。数年後に処分自体が有効と判断されたとしても、いったん失われたイメージを回復させることには困難を伴います。

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以上のとおり、懲戒解雇を選択すること自体、使用者にとって非常に重大な決断であることを自覚する必要があると言えますし、懲戒解雇を選択するにせよ、手順をきちんと踏むことは必須と言えるでしょう。

 

3 デメリットを軽減する方法

懲戒解雇は労働者にとって多大な不利益を被らせる処分です。そのため使用者としては、労働者を懲戒解雇する事情があったとしても、処分を決断するまでのプロセスについては慎重に対応していかなければなりません。

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■裁判例で考慮している要素とは??

過去の裁判例でも、懲戒解雇の有効性は多く争われてきました。裁判例を紐解くと、懲戒解雇該当事由が存在しているかどうか、懲戒解雇を処分として選択することが相当であるかどうか、弁明の機会の付与等、手続が相当であると言えるかどうか等、裁判所は事案ごとに様々な要素を考慮したうえ、慎重に判断しています。

裏を返せば、使用者としては、このような裁判所が重視する判断基準を意識しつつ、処分を選択することが、リスク回避につながった対応と言えます。

(1) 懲戒解雇該当事由の有無の判断の方法について

まず、労働者の非違行為の内容や特定を慎重に行う必要があります。

具体的に、労働者の非違行為の把握について、使用者は労働者が属する部署の上司や他の従業員からの報告を受けて把握することが多いのではないかと思われます。そのような場合、単に報告内容を鵜呑みにすることが危険であることは当然です。

使用者としては、非違行為の報告対象となっている従業員とは別の関係者からも丁寧に聴取を行う必要があると言えます。

そして、当事者や各関係者への聴き取りに際しては、強制ではなく任意で実施することを説明したり、匿名を前提として従業員のプライバシーを保護したりするなど、十分に配慮することが必要であると言えます。

(2) 懲戒解雇を選択することが相当であるかについて

課される懲戒処分は、労働者の懲戒事由の程度や内容に照らして相当なものであることが必要とされています。これを相当性の原則と言います。

労働者が非違行為(※従業員が就業規則や服務規程に反する行為をすること)をしたとして、懲戒解雇以外の懲戒処分を選択する余地があるかどうかについては慎重に判断する必要があります。

労働者に改善の見込みがあるようなら、減給や戒告などのより軽い懲戒処分に留める方が無難です。

雇用関係の終了を前提とせざるを得ないにせよ、まずは労働者と話し合って解決できるかどうかを模索すべきでしょうし、諭旨解雇を検討してみるのも大切です。

不当に重い処分を選択すれば権利の濫用として無効になる恐れもあります。懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇は、なおのこと慎重に判断するのは当然と言えます。また、処分内容を判断する場合には、過去の労働者の企業に対する貢献度にも配慮すべきでしょう。

■過去の処分との均衡も重要です!!

さらに、懲戒処分は同種の非違行為と比較して同程度の処分に留める必要があります(平等原則)。仮に過去に同様の非違行為が行われた場合、当該労働者に対してした懲戒処分内容と対比して処分内容を検討すべきです。

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(3) 手続の適正が図られているか、および手続の証拠化について

適正手続を担保するためには、非違行為があったとされる労働者本人から、時間をかけて、丁寧に聴取したり、弁明の機会を与えたりする必要があります。

形だけの聴取をしたとしても、適正手続が取られたとは言えず、却って後に労働者に不信感を与えかねないことも意識すべきでしょう。

具体例を挙げますと、威圧的な態度を取ったり、非違行為があるものとして決めつけて聴取したりすることは避けるべきです。必要に応じ、顧問弁護士等の第三者にも関与させて、労働者から聴取していくことは有効な手段と言えるでしょう。

そして、使用者としては、後に紛争が生じたとしても自らの主張の根拠を示すことができるよう、手続の経過について記録に残す等の形で証拠化を図ることが大切です。

■手続の証拠保全はしっかりと!!

証拠化の際は具体的に、客観的な証拠を収集して保管しておくことに留まらず、聴取の際に会話内容を録音しておくことや、聴取内容を細かく備忘した資料を残しておくことなどを心掛けるべきでしょう。

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(4) 私生活上の非行や就業時間外の施設管理権の侵害について

使用者に懲戒権を認めた理由が企業の円滑な運営を図るためであることを考えると、職務遂行とは関係があるとは言えない私生活上の非行をした場合や就業時間外に会社の施設管理権(※会社施設・設備の所有者や管理者に認められている包括的な管理権)の侵害をした場合に使用者が懲戒権を行使できるかどうかについての判断は、労働者の非行が労働契約法15条の定める「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」にあたるか否かについて慎重な判断を行う必要があります。

特に、就業時間外に行った会社の施設管理権の侵害については様々な場面が想定されます。たとえば、就業前・休憩中・終業後における会社内での組合活動や宗教活動、また近年では社内の写真・動画撮影をしてSNSに載せるということも問題となっているため、どのような行為が施設管理権の侵害として懲戒処分の対象となるのか慎重に検討し、就業規則で定める必要があります。

 

4 懲戒解雇の前に企業が対策できること

労働者を懲戒解雇せざるを得ないにせよ、予め、以下のような対策を取っておくことが大切です。順にみていきましょう。

(1) 社員教育の徹底

使用者が労働者を懲戒解雇するのは、労働者の非違行為があることを前提とします。そこで、労働者による非違行為を軽減させる工夫を模索することは大切です。その最も有効的なものとして社員教育を充実させることが考えられます。

ここでいう社員教育は、単に技術的に有用な研修(OJT研修等)だけに留まらず、企業秩序の維持につながることが期待できる、本来の業務以外の幅広い研修を実施することを心掛けるべきです。

例えば、昨今、ハラスメントに対する意識が高まっています。だからこそ、ハラスメントをテーマとした研修をすることにより、ハラスメントをする側、される側のいずれに対しても倫理観を備えさせることに繋がりますので、結果的に職場環境の安定につながるでしょう。

(2) 懲戒解雇以外の懲戒処分の検討

懲戒解雇は最も重い処分であり、使用者にとっても、労働者にとっても、リスクを伴うものです。そうすると、懲戒解雇を最初から選択するのではなく、単に注意に過ぎない口頭注意や、より軽い懲戒処分などを選択することをまず検討すべきでしょう。労働者にとっても、懲戒されることにより、自身の非違行為を見直すきっかけとなりますし、反発も懲戒解雇よりは大きくはありませんので受け入れやすいとも言えます。

そして、使用者としても、単に処分内容を記載するだけでなく、非違行為の内容について具体的に列挙しておくことにより、労働者としても、何故、そのような処分を企業が選択したかについて理解を深めることができます。

そして、将来、労働者を懲戒解雇するにせよ、予め戒告などの軽い処分を複数課せられていたことや、それにもかかわらず、態度が改まらなかったことは、懲戒解雇の有効性を裏付ける事情になると言えます。

(3) 就業規則の整備・見直しと周知の徹底

労働基準法89条では、就業規則を定める義務を負うのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者とされています。そのため、常時10人以上の労働者を使用していない使用者は、そもそも就業規則を定める義務はありませんので、就業規則を定めていないことがあります。過去に就業規則を定めたものの、その後は内容を確認したり改めたりすることをせずに、何年も改訂されないままとなっている場合も少なくはありません。

懲戒処分は、就業規則で定める懲戒の種別及び事由によって課せられるものです。作成時に想定できなかったような非違行為を労働者がしてしまった場合、非違行為の後に就業規則を改訂したとしても、先だって労働者が行った非違行為に対しては、懲戒処分を課すことができません。

また、そもそも曖昧な就業規則の規定に基づいて懲戒解雇をすること自体、使用者としては大きなリスクとなります。一般的な就業規則では、懲戒処分の最後に「その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき」といった概括的な規定を盛り込むことが少なくありません。

しかし、使用者としては、このような規定があることで安心したりするのではなく、「前各号に準じた不適切行為」と規定にある以上、「前各号」の内容については、しっかりと見直しを諮る必要があることは自明です。

以上の点を見ても分かります通り、使用者としては、時代に合い、実態に沿った就業規則を設けるように心がけることが非常に大切なことと言えます。

昨今、権利意識自体、高まっていることはご承知の通りです。例えば、先に例を挙げたハラスメント行為に対する世間の目は非常に厳しいものです。使用者としても、企業秩序を安定的に維持するためにも、このような時代に沿った環境を整えていくべきですし、いざ、労働者による非違行為があった場合も、労働者に対し、懲戒処分を課すことを柔軟に検討できるでしょう。

もちろん、就業規則は定めれば良いわけではなく、多くの労働者が目にしやすいところに備え付けておくことも大事です。

このように、使用者としては、就業規則の重要性を理解した上で、一度、作ったとしても安心をせずに、常に意識をしておくことが大切です。

 

5 懲戒解雇トラブルへの対応に関する虎ノ門法律経済事務所の強み

(1)就業規則の策定に精通している弁護士が数多く在籍すること

すでに述べたように、懲戒解雇をするにあたっては、予防策として就業規則において懲戒解雇事由をどのように定めるか等の部分も重要になってきます。その点、当事務所には社会保険労務士の資格を有している弁護士も数多く在籍する等、就業規則の策定に精通している弁護士が数多く存在します。

(2)法的紛争発生後のトラブル解決実績も多数有していること

当事務所は、使用者側の顧問弁護士となるだけではなく、実際にトラブルが生じた際の個別紛争(懲戒解雇が争われた労働審判又は民事訴訟等)の事例において、懲戒解雇が有効であることを前提として使用者側からの解決金額の負担もほぼない勝訴的和解となった事例等を含め、使用者側の意向に沿った解決実績を数多く有しています。また、当事務所には元裁判官や元厚生労働省の職員等、多様なバックグラウンドを持った弁護士が在籍しており、弁護士ごとの強みを生かした柔軟な解決策を図ることが可能です。

 

6 まずは弁護士にご相談ください

懲戒解雇は、懲戒処分の中で最も重いものです。そのため、懲戒解雇を課された労働者の反発は、非常に大きなものですし、使用者としても、できれば選択することを避けたい手段と言えます。懲戒解雇をせざるを得ないにせよ、後に裁判などで争われるリスクがありますが、他方で多くの裁判例が集積されていますので、過去の裁判例を精査することで事前に対策を取ることも可能と言えます。

そして、できる範囲で準備をする一環として、弁護士への相談を早い段階で心掛けることは、結果的に将来のリスクを軽減させる方法として、非常に効果的と言えます。まずは弁護士に相談してみることを検討してみましょう。

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