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2024.12.02

懲戒解雇とは?トラブルにならない進め方・条件などについて弁護士が解説!

懲戒解雇とは?トラブルにならない進め方・条件などについて弁護士が解説!
アイコンこの記事を書いた弁護士

今野 武博

弁護士
虎ノ門法律経済事務所 仙台支店長
私の弁護士としての理念は、依頼者の「紛争を解決すること」です。
トラブルの様態は様々で、その本質を理解しなければ解決することは出来ず、解決方法も千差万別です。依頼者の皆様の話をしっかりと聞き、その紛争の本質を理解したうえで、「依頼者の皆様」にとって最善の方法をご提案します。

1 懲戒解雇とは

(1)懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、普通解雇・整理解雇とは異なり、懲戒処分の一種として労働者を解雇するものであり、労働者が企業秩序に違反する行為をした場合に課する制裁罰としての側面を持っています。

その一方で、普通解雇・整理解雇と同様、労働者との労働契約の終了を効果とする点は同じとなります。

(2)懲戒処分の一種であること

懲戒解雇は、前述のとおり、懲戒処分の一種であり、懲戒処分の種類は、以下のとおり考えられています(① → ⑥の順に処分の程度は、重くなります)

①戒告・けん責

②減給

③出勤停止

④降格

⑤諭旨解雇

⑥懲戒解雇

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(3)諭旨解雇と懲戒解雇の違い

懲戒処分のうち、諭旨解雇と懲戒解雇は、何れも労働契約を終了するという効果は、同一であるため、まず諭旨解雇について説明します。

 

諭旨解雇=使用者が労働者に退職を勧告し、労働者に退職願いを提出させた上で解雇すること。

 

*諭旨解雇の懲戒処分を行ったにも関わらず、労働者が退職願いの提出に応じない場合、懲戒解雇に移行することが一般的です。

*解雇ではなく、退職として取り扱う、「諭旨退職」という規律が設けられている場合もあります。

(4)位置付けの整理

以上を踏まえると、懲戒解雇は、以下のとおり説明することが可能です。

①労働者との労働契約の終了という効果を発生させるもの。

②普通解雇や整理解雇とは異なり、企業秩序に違反する行為に対して、課されるもの。

③懲戒処分の中で一番重い処分であり、普通解雇や整理解雇と比較しても、労働者に発生する不利益が一番大きいもの。

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*使用者側としては、懲戒解雇を選択する際、「解雇予告手当を支払うか否か」、「退職金の一部または全額を不支給とするか」も含めて検討することとなります。

 

2 懲戒解雇に関する規定と注意点 

(1)懲戒解雇に関する法律の定め

懲戒解雇について、法律では、以下のとおり、定められています。

【労働契約法 15条】

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

【労働契約法 16条】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

(2)懲戒解雇の要件

上記法律の定めに基づき、懲戒解雇が有効となるための要件を整理すると以下のとおりです。

① 労働者を懲戒することが出来ること。

② 懲戒処分をすることについて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること。

 

3 懲戒解雇の要件について 

(1)労働者を懲戒することが出来ること

懲戒解雇は、懲戒処分、すなわち労働者に対する制裁の一種であるため、制裁を課する根拠が必要となります。

この点、労働基準法89条では、常時10人以上の労働者を使用する使用者には、就業規則の作成が義務付けられており、また、同条9号では、「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を就業規則に定める旨が規定されています。

 

そのため、一般的には、就業規則において、懲戒に関する事由を規定し、当該条項に該当するときに、「労働者に対する懲戒処分をすることができる場合」という要件を充足することになると考えられます。さらに、就業規則の定め方として、懲戒解雇に該当する事由を明確に定めてある場合もあります。

 

また、使用者には、定めた就業規則を労働者に周知させる義務があり、周知されていない就業規則に効力は生じません。

就業規則に関する詳しい内容はこちら

(2)客観的合理的な理由・社会通念上の相当性

懲戒事由に該当する具体的な事実が存在するとしても、懲戒処分には複数の処分の選択肢が規定されているため、「懲戒事由に該当する企業秩序違反行為」と「懲戒処分」のバランスが保たれていることが必要になります。

さらに、労働者に対する弁明の機会を付与するなど、懲戒解雇に向けた適切な手続を履践している必要があります。

抽象的な定めとなっているため、以下、具体例(裁判例)に即しながら説明をします。

 

4 懲戒解雇の事例検討 

(1)懲戒事由の整理

懲戒解雇に該当する事由としては、厚生労働省が公表しているモデル就業規則を踏まえると、以下のとおり整理できます。

① 経歴詐称

② 職務懈怠(無断欠勤や遅刻等)

③ 業務命令違反

④ 職務上の不正行為

⑤ 私生活上の非行

(2)裁判例の紹介

① 経歴詐称

ア) 東京地判平成16年12月17日

以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

  • コンピュータソフトウェアのプログラミング能力がないにも関わらず、その能力があるかのような経歴書を提出したこと。
  • 面接においても同能力があるかのように回答し、使用者にその旨を誤信させて採用させたこと。

 

→能力不足を理由とする普通解雇も考えられる事案です。

→経歴詐称と採用の過程を適切に立証することにより、懲戒解雇が有効と判断された事案と考えられます。

→また、就業規則の記載も踏まえ、経歴詐称を理由とする懲戒解雇により、解雇予告手当の支払義務も免除された事案です。

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イ) 東京地判平成22年11月10日

以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

  • 使用者は、労働者から示された虚偽の経歴を重視して労働者を雇用した。
  • 2年6か月の期間、実刑判決を受けて服役していたという事実を使用者に告知していた場合、労働者の労働力や信用性を評価し、企業秩序に対する影響を考慮して、雇用契約を締結していなかったと考えられること

→経歴詐称のみで懲戒解雇を有効と判断しているものではなく、「経歴詐称の具体的態様、経歴を偽らなかった場合の採用の可否、経歴詐称後の労働者の行動・使用者側の対応、弁明の機会の付与、解雇に至る手続」を検討した上で、信頼関係を破壊することなどを理由として、懲戒解雇を有効と判断しています。

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② 職務懈怠

ア) 東京地判平成14年4月22日

以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

  • 業務過誤に関する経過報告書の提出命令を二度にわたり拒絶
    →第1次けん責処分
  • 出席を命じられた会議に、二か月間で7回欠席
    →第2次けん責処分
  • 上司の了解を得ずに早退
    →減給処分
  • 会議の欠席及び伝票処理に関する業務命令に従わない
    →出勤停止(7日間)
  • 無許可で早退・欠席・業務過誤を反復し、事情聴取も欠席し、職場復帰命令にも従わなかった。
    →過去の懲戒歴及び懲戒処分に至る経緯を立証することにより、職務懈怠を理由として、懲戒解雇が有効と判断された事案と考えられます。
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    イ) 福岡高判平成17年9月14日

    以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

    • 専門学校の教員が出会い系サイトに投稿して多数回にわたりメールを送信したこと(ただし、労働者に対するパソコンの使用方法・遵守事項に関する説明や使用規程は制定されていなかった。)。
    • 約5年間で、3000通のメールの送受信を行った。
    • 学校名を特定できるメールアドレスを使用しており、第三者から閲覧可能な状態であった。

    →この事案では、「勤務時間中において、メールの送受信に要した時間を本来の職務に充てていれば、より一層の成果を得られていた」、「第三者が学校のメールアドレスから投稿されていることを認識出来た」などの事情を重視して、懲戒解雇を有効と判断しています。

    →勤務時間中における、大量の私用メールの送受信を立証することにより、職務懈怠を理由として、懲戒解雇が有効と判断された事案と考えられます。

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    ③ 業務命令違反

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    ア) 最高裁判決平成10年7月17日

    以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

    • 1か月間にわたる年休を申請したところ、使用者は後半の2週間につき、時季変更権を行使                                   →労働者は欠勤したため、けん責処分(当該懲戒処分は有効であることが裁判所において確定。)。
    • 労働者は、再度、事前の調整をすることなく、1か月間にわたる年休を申請→使用者は、後半の2週間につき、時季変更権を行使                →労働者は欠勤した。

     

    →長期の年休の際、時季変更権を行使することについて、裁判所において、懲戒処分(けん責)の有効性が確定されたことを重視し、使用者における労務管理・人事政策に与える影響を考慮して、業務命令違反を理由とする懲戒解雇が有効と判断された事案です。

    →「裁判所の判断を無視する=使用者における労務管理・人事政策に与える影響を考慮しない=企業の秩序維持を鑑みない」と理解することが可能と考えられます。

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    イ)大阪地判令和3年11月29日

    以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

    • 有効な配転命令がなされたこと。
    • 業務上の必要性がある場合、配転を命じることができ、職務上の指示命令に反して職場の秩序を乱した場合には懲戒解雇事由に該当するとされていること。
    • 配転命令に応じないという事態を放置した場合、企業秩序を維持することが出来ないこと。

    →使用者側が配転命令に際して、誠実な交渉(説明会の開催・半年間で5回の面談機会の設定・メールを含めたやり取り)を実施する一方、労働者は暴言ともとれるメール等を送付しており、配転命令が有効であることを慎重に判断した上で、配転命令違反を理由とする懲戒解雇が有効と判断された事案です。

    ④ 職務上の不正行為

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    ア)最判平成14年1月22日

    以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

    • 学校法人事務局次長である労働者が、適正な会計処理を行わなかった(災害復旧にかかる保険金を直接、工事業者に振り込ませ、工事代金支払いの事実を会計帳簿に記載しなかったこと)。
    •  備品のリース契約に際し仲介業者に不当な利益を取得させた。

    →適切な会計処理が行われなかったことなどいついて、学校関係者からの疑念を抱かれ、所轄庁からは補助金の交付が保留されるなどの事情を併せて考慮した上で、懲戒解雇が有効と判断された事案です。

    イ)東京地判令和4年12月26日

    以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

    • 社内の機密情報の取扱いに関する就業規則が定められていたところ、社内の機密情報を私的に使用するアカウントにアップロードした(ただし、不正競争防止法上の営業秘密にあたるものではなかった。)。
    • 情報のアップロードは、退職後の利用目的であったと推認できること。
    • 情報漏洩に対する使用者側の対抗手段は限られていること。

    →退職後の情報の利用目的の推認・情報漏洩に対する対抗手段は限られていることを考慮した上で、懲戒解雇が有効と判断された事案です。

    →懲戒解雇とした上で、退職金を一部不支給とすることにより、情報漏洩による損害が一部、填補されるという結果になります。

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    ウ) 東京地判平成30年5月30日

    以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

    • 住宅手当・単身赴任手当を不正に受給した。
    • 社宅使用料の支払や賃料支払等を不正に免れた。
    • 社内備品の破損や業務指示に違反したことを理由とする懲戒処分歴があった。
    • 上記の損害額は、400万円程度にのぼる。

    →不正受給の期間・金額・態様を考慮し、返還を求めた際の対応などを考慮した上で、懲戒解雇が有効と判断された事案です

    →この事案では、退職金の性質を検討し、確定給付企業年金法に基づき支払われる退職金を除いて、会社が支払うべき退職金の6割を減額することが認められました(全額不支給までは認められないと判断されています。)。

    ⑤ 私生活上の非行

    ア)東京高判平成15年12月11日

    以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

    • 平成9年12月、鉄道会社従業員が電車内で痴漢行為をした。
    • 平成12年5月にも、電車内での痴漢行為をした。
    • 同年11月にも、電車内での痴漢行為をした。
    • 勤務態度に問題はなかった。

    →鉄道会社の従業員であるため、電車内での痴漢行為をしてはならない立場であり、報道等により公になるか否かを問わず、社内処分が厳しいものとなってもやむを得ないと指摘した上で、懲戒解雇が有効と判断された事案です。

    →この事案では、私生活上の行為であること、勤務態度、過去の支給事例を検討した上で、退職金の7割を減額することが認められました(全額不支給までは認められないと判断されています。)。

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    イ)東京高判平成25年7月18日

    以下の事実関係を前提として、懲戒解雇が有効と判断されています。

    • 郵便事業社の従業員(内務業務)であったところ、酒気帯び運転で物損事故を起こし、事故を申告せず、立ち去った(民事責任は解決済み。)。
    • 新聞報道もされ、公になった。
    • 無断欠勤の戒告処分があった。

    →酒気帯び運転の具体的態様を考慮し、自動車等により集配業務を行うことを主たる事業とする使用者の社員としての適格を欠くと判示した上で、懲戒解雇が有効と判断された事案です。

    →この事案では、退職金の性質、過去の勤務態度を検討した上で、退職金の7割を減額することが認められました(全額不支給までは認められないと判断されています。)。

    5 懲戒解雇をしたい際の注意点・チェックポイント 

    上記では、何れも懲戒解雇が有効であることを前提とした裁判例を紹介しましたが、裁判手続の結果、懲戒解雇が無効と判断された事案も多数存在します。

    懲戒解雇は、労働契約を終了するという点で、労働者に対する不利益の程度が大きく、重ねて、「退職金の不支給・解雇予告手当・離職票の記載」などの不利益も発生するため、使用者側としては慎重に懲戒解雇の可否を選択し、手続を進めていくことが必要となります。

    また、裁判例の紹介で記載したとおり、懲戒解雇を基礎づける事情(懲戒解雇を基礎づける労働者の行為の具体的な態様・その行為の影響・結果など)に関する証拠の収集を適切に行い、証明しなければなりません。

     

    6 懲戒解雇の具体的な流れについて

    ① 事実関係の調査

    ② 懲戒解雇に向けた弁明の機会の付与

    →就業規則において、規定されている手続を履践する。

    →就業規則において、手続が規定されていない場合であっても、対象となる労働者への弁明の機会を付与することが必要となります。

    ③ 懲戒解雇の通知

    ④ 労働者の名誉・プライバシーに配慮した上で、社内秩序維持という観点から必要最低限な範囲で懲戒解雇に関する社内公表

    7 懲戒解雇通知書の作成のポイント 

    事後的に懲戒解雇の理由を追加することは出来ないと考えられているため(最判平成8年9月26日)、懲戒解雇を基礎付ける具体的事実を、過不足なく記載する必要があります。

    また、懲戒解雇が無効になる可能性が想定される場合には、予備的に普通解雇の意思表示をしておくことも選択肢として考えられます。

    8 弁護士による解雇・懲戒処分対応 

    (1)弁護士が対応する場合の進め方

    弁護士が、懲戒解雇に向けて対応する場合の進め方は、以下のとおりです。

    ① 懲戒解雇を基礎付ける事実関係の確定

    ②  同様の事案に関する裁判例の調査

    ③ 懲戒解雇の適否の検討

    (2)事実関係の確定作業

    懲戒解雇を基礎づける事実関係の確定をするにあたって、懲戒解雇の有効性は様々な事情を考慮した上での判断になるため、「懲戒解雇が有効であることを基礎づける事情」を確定させる一方で、労働者が主張すると考えられる「懲戒解雇が無効となり得る事情」も適切に考慮しなければなりません。

    (3)裁判例等の調査

    懲戒解雇の適否を判断するにあたっては、関連する裁判例を調査することになりますが、懲戒解雇が労働者の非違行為に対する懲戒処分である以上、同一の事実関係を前提とする裁判例が存在することはありません。

    そのため、同種事案であったとしても、関連する裁判例と比較して、「懲戒解雇が有効であることを基礎づける事情」及び「懲戒解雇が無効となり得る事情」の位置付けを検討することになります。

    この点、人事院が示している懲戒処分の指針も参考になります。

    (4)懲戒解雇の適否の検討

    上記のとおり、事実関係を確定させ、同種事案の調査を行った上で懲戒解雇処分を課すことについて、「客観的合理的な理由があり、社会通念上の相当性を有しているか」を検討することになり、その結果、以下の対応の何れかを選択することになります。

    • 労働者が争ったとしても、懲戒解雇が有効であると考えられる場合には、会社の経営に与える影響などを検討・相談した上で、懲戒解雇に向けた適正な手続を履践することになります。
    • 労働者が懲戒解雇を争った場合、懲戒解雇の有効性について、疑義が残る場合には、懲戒解雇と同一の効果をもたらす、普通解雇や諭旨解雇などの処分を検討し、かつ、懲戒解雇をしないことにより会社に与える影響を検討しながら、手続の選択を進めることになります。
    • 労働者が懲戒解雇を争った場合、無効になる可能性が高い場合には、普通解雇や諭旨解雇などの処分を検討することになります。また、今後、同様の事態が発生した場合に企業秩序の維持という観点から懲戒解雇が選択できるよう、各種規定を整備すると共に、同様の事態が発生しないよう、改善策(社内周知や損害賠償請求の対応、懲戒解雇より軽い懲戒処分の実施)を検討することになります。

    9 懲戒解雇を不当だと訴えられた!対処方法は? 

    (1) 内容証明郵便や労働局からのあっせんに関する文書が届いた場合

    懲戒解雇を争う旨の内容証明郵便が届いた場合、前述の具体的な流れを遵守しているかを再確認し、少なくとも、手続的な不備がないことを確認することが必要となります。

    その上で、弁護士や司法書士が代理人として対応している場合には、その後の法的手段(訴訟や労働審判の申立て)が予定されていると考えられますので、懲戒解雇の有効性について、再検討をすると共に、具体的な方針等を確定させるため、弁護士等に相談をすることが最善の策と考えられます。

    また、労働組合等からの文書が届いた場合であっても、団体交渉の規律を踏まえ、上記と同様の対応することが必要と考えられます。

    一方、労働局からのあっせんに関する文書が届いた場合、裁判所からの書面が届いた場合とは異なり、強制力があるものではなく、自社の主張を労働局の担当者に伝えて、労働局の考え方を踏まえて、自主解決することも一案と考えられます。

    もちろん、弁護士に相談した上で、対応することが最善の策であることに変わりはないのですが、当該事案の自主的解決の可能性・今後の同種事案への対処における応用可能性などを考慮して、判断することになります。

    (2)裁判所からの労働審判の申立書・訴状・仮処分の申立書が届いた場合

    裁判所からの書面が届いた場合、何らの対応をしないと、金銭の支払いなどを命じる処分がなされることになりますので、必ず対応をしなければなりません。

    弁護士等に依頼せず、社内の人事担当者や代表者にて対応することも可能ですが、裁判所は、当事者が主張しない事情を積極的に調査して判断することはありませんので、使用者側にとって有利に働く事情等を適切に立証しなければなりません。

    また、裁判所における手続に対応すると共に、弁護士と事案の解決に向けた協議をする中で、今後、同種事案が発生した場合の初動・対応方針を決定するに際して、参考になることも多いものと考えられますので、弁護士に相談しながら、対応をした方が良いものと考えられます。

     

    10 解雇予告手当の支払義務との関係

     懲戒解雇の手続を選択する場合、労働基準法20条1項但書が規定する、「労働者の責に帰すべき事由に該当すること」を理由として、解雇予告手当の支払義務を免れることが可能な場合もあります。

    前述の裁判例(東京地判平成16年12月17日、経歴詐称に関する裁判例)でも解雇予告手当の支払義務を認めていません。当該裁判例において、就業規則に,解雇予告の除外認定を受けたときは解雇予告手当を支給しないと定められていること、経歴詐称による本件解雇について,労働基準法20条1項ただし書の「労働者の責めに帰すべき事由」という解雇予告手当の支払義務に関する除外事由があることから、解雇予告手当の支払義務を認めませんでした。

     

    11 退職金の不支給との関係

    懲戒解雇の手続を選択する場合、就業規則の規定に基づき、退職金の全額または一部を不支給とすることが認められる場合もあります。

    前述裁判例(東京地判平成30年5月30日、職務上の不正行為に関する裁判例)では、退職金について、通常、賃金の後払い的性格と功労報償的性格とを併せ持つものであるという性質から、当該従業員のそれまでの長年の勤続の功、を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限り、退職金の減額または不支給が許されると判示して、(確定給付企業年金法に基づき支払われる退職金を除く部分のうち)約6割の退職金の不支給を認めました。

    また、前述の裁判例(東京高判平成25年7月18日、私生活上の非行に関する裁判例)では、酒気帯び運転は、従業員のそれまでの永年の勤続の功を相当程度減殺するものというべきであると判示しましたが、勤務態度が不良であったとはいえないこと、処分の対象となった行為が業務外のものであることなどを考慮して、約7割の退職金の不支給を認めました。

     

    12 解雇・懲戒については弁護士にご相談ください

    懲戒解雇の適否の項で説明しましたとおり、弁護士に相談した場合には、以下のとおり、対応することになり、会社の利益になるものと考えられますので、懲戒処分について、処理方針に少しでも不安が発生した場合には、解雇・懲戒処分を行うに先立って、弁護士にご相談下さい。

    • 事実関係を調査した結果、懲戒解雇が有効になる可能性が高い事案であれば、懲戒解雇が無効になる可能性を限りなく低くなるよう、手続を進める。
    • 事実関係を調査した結果、懲戒解雇が有効になるか無効になるか、判別し難い事案であれば、懲戒解雇と同一の効果をもたらす、他の手段等がないかを検討し、適切な手続を選択する。

    事実関係を調査した結果、懲戒解雇が無効になる可能性が高い事案であれば、当該事案に対する適切な処分を行うと共に、今後の会社経営・労務管理の観点から、同種事案において懲戒解雇が選択できるよう各種規定を整備し、また、同様の事態の発生を防止するよう、改善策をアドバイスする。

     

     

     

     

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