2026.02.09
パワハラの定義とは?判断の基準について弁護士が判例を交えてわかりやすく解説!


神山 高俊
弁護士私自身、高崎市に於いて弁護士業務を続けてまいりましたので、東京本店との連携をとって40年以上もの伝統を誇る当事務所のサービスを、高崎の地に合わせた形で提供していく所存です。
1 パワハラの定義の明確化(令和2年)
(1) 法律の規定
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」といいます)では、以下の通りパワーハラスメント(以下、「パワハラ」とします。)の定義が定められています。
労働施策総合推進法第30条の2第1項
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
(2) 労働施策総合推進法とは
このように、パワハラの定義は、労働条件について最低基準を定めた法律である「労働基準法」や労働契約における基本的事項を定めた「労働契約法」には定められていません。昭和41年に定められた法律である「労働施策総合推進法」が、令和2年4月1日に大幅に改正された際に、パワハラの定義も新たに定められたのです。この労働施策総合推進法が、現在よく耳にする「パワハラ防止法」と言われるものです。
2 パワーハラスメント防止措置の全事業主への義務化(令和4年)
令和2年4月1日に改正された「改正労働施策総合推進法」は、同年6月1日に施行されました。このうち、当初、同法が定める「パワーハラスメント防止措置」は、大企業のみ義務化され、中小企業に対してはこれを違反した場合でも単なる努力義務としていました。
しかし、2年弱の猶予期間を経て、令和4年4月1日から義務化されました。現時点では、パワハラ防止法には罰則(ここでいう罰則とは刑事罰を意味します)規定が設けられていないので直接同法の罰則が適用されることはありませんが、以下に記載するようなリスクがあります。また、本コラムで後ほど説明するように、防止措置を行わなかった場合、助言・指導・勧告をされたり、企業名を公表されるリスクがあります(同法33条2項)。そのため、企業は、早急に対策をする必要があります!!
「就業規則改正」や「相談窓口の設置」といった施策で今からしっかりと対策していきましょう!
参照:ハラスメントの定義|ハラスメント基本情報|あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト-
(1) 厚生労働省が挙げるパワハラの定義の3要素
それでは、職場のパワハラとは、どのようなものが該当するのでしょうか?
パワハラの定義が定められても、それだけでは、どのようなものが該当するか明確には分かりません。それを判断するために、厚生労働省が定めたいわゆる『パワハラ指針』(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】)では、以下の3要素をあげています。
ⅰ:優越的な関係を背景とした言動であること
ⅱ:業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
ⅲ:労働者の職場環境が害されるような言動であること
つまり、職場のパワーハラスメントとは、定義の中で示されている、『職場』において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③『労働者』の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
もっとも、これを全て満たしたとしても、『客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導』に該当する場合には、職場におけるパワーハラスメントからは除外されます。
(2) パワハラの定義における用語解説
これまで、パワハラの定義・三要素などを、説明してきました。もっとも、この中でも、また、詳細な説明が必要となる部分があります。そこで、パワハラの定義に従って、説明していきましょう。説明に際しては厚生労働省ホームページ「職場におけるハラスメント対策パンフレット」を参照します。
① パワハラが問題となる「職場」とはどういう場所?
「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれます(パワハラ指針2⑵)。
勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、㋐その場でなされた行為と職務との間の関連性、㋑その場でなされた集まりの参加者の顔ぶれや人数、㋒参加や対応が強制的か任意かといった要素を総合的に考慮して個別に行う必要があります。
そのため、勤務時間外の宴会や取引先との接待の席についても、職務に密接に関連するとして「職場」に含まれるとされています。
② パワハラの被害者となる「労働者」とはどのような人?
ここでいう「労働者」とは、正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する全ての労働者をいいます。
そのため、例えば、自社の従業員ではなく、取引先の従業員に対して不適切な暴言を吐いたとしても、「労働者」に対する言動にはあたらず、ここでいうパワハラとはいえないと考えられます。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇用する労働者と同様に、措置を講ずる必要があります。(パワハラ指針2⑶)
そのため、派遣社員に対する言動もパワハラに該当することがあり、自社の従業員に対する言動と同様の基準で判断されます。
③ 3要素のⅰ「優越的な関係を背景とした」言動とは?
- 例
・職務上の地位が上位の者による言動
・同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
・同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
④ 3要素のⅱ「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは?
- 例
・業務上明らかに必要性のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況(※)、行為者の関係性等)を総合的に考慮することが適当です。
その際には、個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要です。なお、労働者に問題行動があった場合であっても、人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、当然、職場におけるパワーハラスメントに当たり得ます。
※ 「属性」・・・・・(例)経験年数や年齢、障害がある、外国人である 等
「心身の状況」・・(例)精神的又は身体的な状況や疾患の有無 等
⑤ 3要素のⅲ「就業環境が害される」とは
当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当です。
なお、言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合には、1回でも就業環境を害する場合があり得ます。
(3) パワーハラスメントに該当する行為の具体例
それでは、これらを踏まえて、パワーハラスメントの具体例について、代表的なものをあげてみます。政府の広報オンラインでは以下のような代表例をあげて説明を行っています。
参照:NOパワハラ なくそう、職場のパワーハラスメント | 政府広報オンライン
① 職場のパワーハラスメント 6つの類型
ア 身体的な攻撃(暴行・傷害など)
殴打、足蹴りをする など

イ 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言など)
人格を否定するような発言をする など

ウ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視など)
自身の意にそぐわない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする など

エ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる など

オ 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる など

カ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
職場内外で継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする など

上司が部下を厳しく指導することが必要な場面もありますが、上記ア・イ・ウのように、暴力を振るったり、相手の人格を否定するようなことを言ったり、無視したりすることは、「業務の適正な範囲」とは言えません。
また、エ・オ・カの場合は「業務の適正な範囲」との線引きが難しいケースがあります。さらに、その行為が行われた状況や行為の継続性によっても、パワーハラスメントか否かの判断が左右される場合もあるため、それぞれの職場で、どこまでが「業務の適正な範囲」なのかを明確にすることが望まれます。
(4) 職場におけるパワハラに該当しないとされる行為の代表例
また、厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が令和6年に作成したパンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」においては、以下のような具体例があげられています。
参照:パンフレット「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!」
厚生労働省が挙げる職場におけるパワハラの代表例を表にしてみると、以下のようになります。
※以下は上記厚生労働省の上記パンフレットの一部をその趣旨に反しない限度で一部ナンバリング等の形式面のみ編集したものです。
| (イ)該当すると考えられる例 | (ロ)該当しないと考えられる例 | |
| (a)身体的な攻撃 (暴行・傷害) |
①殴打、足蹴りを行うこと。 | ①誤ってぶつかること。 |
| ②相手に物を投げつけること。 | ||
| (b)精神的な攻撃 (脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言) |
①人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的思考・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。 | ①遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。 |
| ②業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。 | ②その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。 | |
| ③他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。 | ||
| ④相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。 | ||
| (c)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視) | ①自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。 | ①新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。 |
| ②一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。 | ②懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。 | |
| (d)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害) | ①長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。 | ①労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。 |
| ②新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。 | ②業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。 | |
| (e)過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと) | ①管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。 | ①労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。 |
| ②気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。 | ||
| (f)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) | ①労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。 | ①労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。 |
| ②労働者の性的思考・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。 | ②労働者の了解を得て、当該労働者の性的思考・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。(この点、プライバシー保護の観点から、f(イ)②のように機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要である。) |
3 職場におけるパワーハラスメントが問題となった裁判例
それでは、職場におけるハラスメントが裁判で争われた事案について、見ていきましょう。
一般的に、パワーハラスメントというと、上司から部下に対して、職務上優位な関係に基づいてなされるものと決めつけがちです。
しかし、裁判例の中では、上司からのハラスメントに加え、同僚や、部下から行われたハラスメントが争われた事例もあります。
(1) 上司からのパワハラ事例
① 上司からの叱責・暴行・暴言が問題となった事例
(日本ファンド(パワハラ)事件・東京地裁平成22年7月27日判決労働判例1016号35頁)
消費者金融会社に勤務していた従業員3名が、上司及び会社に対し、上司から受けた「馬鹿野郎」「給料泥棒」「責任を取れ」などの叱責や暴行・暴言について、パワハラによる損害賠償等の請求訴訟を提起し、慰謝料等の請求が認められた。
② 上司からの叱責及び部下の心身に配慮を欠いた言動が問題となった事例
(サントリーホールディングス事件・東京高裁平成27年1月28日判決労働経済判例速報2284号7頁、東京地裁平成26年7月31日判決判例時報2241号95頁)
❶ 上司が、業務上のミスが多い部下に対して、叱責する際に、「新入社員以下だ。もう任せられない。」、「何で分からない。お前は馬鹿。」といった発言をし、これを受けた従業員がうつ病に罹患した事案。
上司の言動は本件従業員に対する注意又は指導のための言動として許容される限度を超え、相当性を欠くものであり、不法行為を構成するものであるとした。
❷ うつ病の診断書を提出して休職を願い出た部下に対して、直属の上司が「3か月の休みを取るなら隣の部署への異動の話は白紙に戻す」などの言動をした。これは、部下がうつ病に罹患したことを認識したにもかかわらず、部下の休職の申出を阻害する結果を生じさせるものであって、上司の立場にある者として、部下の心身に対する配慮を欠く言動として不法行為を構成する、とされた裁判例です。
(2) 同僚からのパワハラ事例
① 同僚や部下による集団での嫌がらせ行為が問題となった事例(労災給付の不支給決定が取り消された事案)
(大阪地裁平成22年6月23日判決)
同僚女性らに陰湿ないじめや嫌がらせを長期間受けたことにより精神障害(不安障害、抑うつ状態)を発症したとして、業務起因性(相当因果関係)を認めるとともに、国が主張する労災の判断指針によっても心理的負荷が「強」であることを認め、労災給付の不支給決定を取り消した裁判例です。
② 同僚からのハラスメント(説得活動)が問題となった事例
(大阪地裁平成24年4月13日判決労働判例1053号24頁)
医療法人の理事及び職員で組織する組合を脱退し他組合に加入した元職員に対し、理事らが他組合を脱退するよう説得した一連の説得活動が強い心理的負荷を生じさせたなどとして、元職員の医療法人に対する不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求を認めた裁判例です。
(3) 部下からのパワハラについて
① 部下による中傷ビラの配布が問題となった事例
(東京地裁平成21年5月20日判決判例時報2059号146頁)
レストランの料理長兼店長に関する中傷ビラ(金銭や物の着服をしているとか部下との男女関係があるなどと記載したもの)を部下が配布したため、店長がうつ病になり自殺した事案について、相当因果関係が認められるとして労災認定がされた裁判例です。
② 部下から上司に対する辛辣な発言が問題となった事例
(京都地裁平成27年12月18日判決)
部下から上司に対する辛辣な発言(「字を他の人にも読めるように書いてください。ペン習字でも習ってもらわないといけない。」「時間かかりすぎです。この表の作成に1日もかかりませんよ。」「エクセルのお勉強してください。分からなかったら娘さんにでも教えてもらってください。」「日本語分かってはりますか。」等)につき、上司に対する強度の心理的負荷であったと認定し、上司のうつ病発症につき業務起因性があると判断した裁判例です。
4 予防・解決のために職場で取り組むことは?
(1) パワハラ防止法で定められた事業主の義務について
令和4年(2022年)4月からは、パワハラを防止するための取組をすることが、すべての事業主に義務化されました。事業主は、パワハラを防止するために以下のような措置を講じる必要があります。
① 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
パワハラの内容、パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に周知・啓発する。
パワハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則などの文書に規定し、従業員に周知・啓発する。
② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口をあらかじめ定め、従業員に周知する。
相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにする。パワハラが生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合やパワハラに該当するかどうか分からない場合であっても、広く相談に対応する。
③ 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
事実関係を迅速かつ正確に確認する。
事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う。
事実関係の確認ができた場合には、ハラスメント行為を行った者に対する措置を適正に行う。
再発防止に向けた措置を講ずる。
④ 併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
相談者やハラスメント行為をした者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、従業員に周知する。
事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局の援助制度を利用したことなどを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされないことを定め、従業員に周知・啓発する。
(2) 従業員のハラスメントに対する理解が重要であること
職場のハラスメントをなくしていくためには、事業主の取組だけでなく、従業員もハラスメント問題に関する理解と関心を深め、他の従業員に対する言動に、必要な注意を払うことが重要です。仕事をしていく中で関わる人たちをお互いに尊重し合い、ハラスメントのない職場にしていきましょう。
(P5、『4 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し雇 用管理上講ずべき措置の内容』参照)
5 パワハラを放置するリスクとは?
(1) パワハラに当たる言動があった場合に事業主が対処を誤った場合どうなるの
では、社内でパワハラに当たる言動があった場合、事業主としてはどのような責任を負うのでしょうか?
事業主がパワハラにあたる言動があったことを把握しているにもかかわらず、そのまま何もしないで放置してしまった場合に、事業主が負う責任について、説明します。
① パワハラ防止措置の義務に違反した場合の刑事罰と行政罰
パワハラ防止法で定められた前記①~④の義務に違反した場合にどのような罰則があるのでしょう。
(ア) 現時点では、パワハラ防止法には罰則規定(刑事罰)が設けられていません。ただし、問題が見受けられる企業には行政(厚生労働大臣)より助言・指導又は勧告が入るほか、是正勧告を受けたにも関わらず従わなかった場合には、企業名が公表されます(改正労働施策総合推進法第33条第2項)。
(イ) もう1点、行政(厚生労働大臣)は企業に対して、パワハラに対する措置と実施状況について報告を求めることができるとされています。それに対して「報告をしない」あるいは 「虚偽の報告をした」場合「20万円以下の過料」が科されるという制裁規定が設けられています(改正労働施策総合推進法第36条第1項、第41条)。
② 慰謝料請求の対象となる
実際にパワハラが起こった場合、パワハラ行為を行った本人についてはもちろん、場合によっては加害者を雇用する会社も同様に、以下のような損害賠償責任が生じる可能性があります。
ア 安全配慮義務違反による損害賠償責任
まず、想定される損害賠償責任の一つが、安全配慮義務違反による損害賠償責任です。
労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定し、企業の安全配慮義務が明文化されています。そのため、パワハラが行われるような環境の職場を放置し、従業員が著しい身体的苦痛や精神的苦痛等の被害を受けてしまった場合、企業は安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負うことになります。
イ 不法行為による損害賠償責任(民法第709条、第715条)
次に、想定される損害賠償責任の一つが、使用者責任による損害賠償責任です。
従業員がパワハラ行為等の不法行為による損害賠償責任を負う場合、事業主は連帯して使用者責任による損害賠償責任を負います(民法715条1項)。
また、使用者の安全配慮義務の観点から「パワハラの実態を知っていたが放置していた」 などという場合には、事業主が、直接、民法上の不法行為責任(民法第709条)に問われる可能性もあります。
事業主がパワハラの被害者から損害賠償請求された場合は、それに対して交渉し、解決していく必要があります。
③ 労災認定の対象となる
強度のパワハラや継続的なパワハラがあり、その被害者がその後概ね6か月以内に精神疾患を発症した場合等、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」に該当する場合、労災が認定されることがあります。
NOパワハラ なくそう、職場のパワーハラスメント | 政府広報オンライン
(2) 全ての事業主に早期にパワハラ防止法対策が必要です
パワハラ防止法では令和4年4月より、いよいよ中小企業も義務化対象となっています。事業主にとっては、罰則は未だ規定されていないとはいえ、違反した場合には行政の指導が入り、事業主名が公表される危険性があるため、大きなダメージを追う可能性があります。
さらに、損害賠償や労災認定の対象となり、経済的、社会的なダメージを追わなければならない場合もあります。
現在、労働問題は、事業主にとって大きなリスクとなっています。事業主の方々は、早期に労働問題に精通した弁護士に相談をして、リスクに備える必要があります。

神山 高俊
弁護士私自身、高崎市に於いて弁護士業務を続けてまいりましたので、東京本店との連携をとって40年以上もの伝統を誇る当事務所のサービスを、高崎の地に合わせた形で提供していく所存です。







