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2024.07.31

宿泊サービス業(ホテル)でよくある労務トラブルと 知っておくべきポイントについて弁護士が解説!

宿泊サービス業(ホテル)でよくある労務トラブルと 知っておくべきポイントについて弁護士が解説!

【執筆:岩楯清一(弁護士)】

1 宿泊サービス(ホテル)業とは

宿泊サービス(ホテル)業の前提として、旅館業法上の「旅館業」というものがあります。「旅館業」とは、旅館業法に基づく営業許可を得て、宿泊料を受けて人を施設に宿泊させる事業を言います。

旅館業は、旅館業法が定める施設設備基準に応じて、以下の4つに分類されます。

①ホテル営業
洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業

②旅館営業
和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業

③簡易宿所営業
宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業(民宿やカプセルホテル、ゲストハウス、ペンションなど)

④下宿営業
施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業(マンスリーマンションなど)

 

なお、旅館業がアパート等の貸室業と異なる点は、宿泊業は①客室を含め、施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあり、かつ②宿泊者が客室に生活の本拠を有さない点です。

このコラムでは、「宿泊サービス(ホテル)業」とは、上記の「1.ホテル営業」と「2.旅館営業」とを総称したものを指すこととします。

 

2 宿泊サービス(ホテル)業に関する法改正(カスハラ、感染防止対策)

(1)はじめに

宿泊サービス(ホテル)業を規律する旅館業法は、宿泊サービスを提供する旅館やホテルなどの健全な発展を図るとともに、施設の衛生水準を維持し、国民生活の向上を図るために1948年(昭和23年)に作られた法律です。最近、注目されているのが、昨年(2023年)12月13日にこの法律が改正されたことです

【従来の旅館業法の問題点】

本来契約をするかどうかは、契約自由の原則により自由に当事者間で決められます。しかし、ホテル・旅館等の宿泊事業者については、その自由が一部制約されています。

具体的には、以下のいずれかに該当する場合でない限り、原則として宿泊拒否ができません(旅館業法第5条)。

しかも、この規定に違反して宿泊拒否をしたときは、事業者に対し50万円以下の罰金(刑事罰)を課すことが出来ると定められており(同法第11条1号)、旅館業法は強い宿泊契約締結義務を宿泊事業者に課しているのです。

伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき、

賭博その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき

宿泊施設に余裕がないとき

④その他都道府県が条例で定める事由があるとき

このような宿泊業者の自由を制約をする定めがされたのは、この法律が作られた1948年は敗戦後間もなく、社会全体の公衆衛生は劣悪で、宿泊事業者が自由に宿泊を拒めるとすれば、公衆衛生がさらに悪化されることが懸念されたためであると言われています。

【改正の経緯】

時代は変わり、現代の公衆衛生は劣悪ではありません。また、新型コロナウイルス感染症の流行期において、事業者側が真摯に感染防止への協力を求めているにもかかわらず、それに宿泊客が応じず、従業員に対して度を超えたクレームを行ったり、実現困難な要求をして従業員を不当に長時間拘束することも増え、従業員の方が対応に疲弊することも少なくなくなりました。

このような経緯を踏まえ、今般、宿泊拒否事由の追加を含めた旅館業法の改正が行われることとなったのです。

【改正の内容】

① カスタマーハラスメントへの対応に関する規定

② 感染症防止対策への協力に関する規定

の2つが新設されました。

この改正から、旅館やホテルの営業者は、カスタマーハラスメントに該当する特定の要求を行った人に対して、その宿泊を拒むことができるようになりました。また、宿泊客に対してホテルや旅館の感染症防止対策への協力を求めることもできるようになりました。

以下では、改正の要点についてお話します。

(2)改正の要点1 「カスタマーハラスメントへの対応」

(ア)カスタマーハラスメントとは?

「カスタマーハラスメント」とは、顧客や取引先という立場の優位性を盾に悪質な要求や理不尽なクレームを行う行為のことをいいます。旅館やホテルにおいては、宿泊客や宿泊をしようとする者が、逆らうことができない立場にある従業員に、無理難題や謝罪を大声で求めるといった行為が挙げられます。「お客様は神様」という言葉に代表される「おもてなし」文化を大切にする日本のホテルや旅館であっても、理不尽な要求を繰り返すカスタマーハラスメントは許されるべきものではありません。

(イ)宿泊拒否事由に追加された「特定要求行為」

そこで、そのようなカスタマーハラスメントに該当しうる行為(以下、「特定要求行為」と言います。)が、改正により新しく宿泊拒否事由として追加されました。

まず、「特定要求行為」について、旅館業法は「宿泊しようとする者が、営業者に対し、その実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求として厚生労働省令で定めるもの」と定義しています(法5条3号)。

 

宿泊拒否事由となる行為のポイントが2つあります。

❶「実施に伴う負担が過重であること」

「負担が過重」かどうかについては、事務・事業への影響の程度、実現可能性の程度、費用・負担の程度、事業規模、財政状況といった要素を考慮して、個別事案ごとに、具体的事情に即して総合的、客観的に判断することが必要となります。

❷「他の宿泊者への宿泊サービスの提供を著しく阻害するおそれのあること」

政府広報では、以下の行為を新たに宿泊拒否事由に当たる行為の具体例として挙げています。

 

新たに宿泊拒否事由に該当する行為の具体例

① 宿泊予定者が、宿泊サービスの従業員に、他の宿泊者へのサービスには無い宿泊料の不当な割引や慰謝料、部屋のアップグレード、遅めのチェックアウト、早めのチェックイン、契約にない送迎など過剰なサービスを行うよう繰り返し求める行為

② 宿泊予定者が、宿泊サービスの従業員に、自分が泊まる部屋の上下左右の部屋に宿泊客を入れないことを繰り返し求める行為

③ 宿泊予定者が、宿泊サービスの従業員に、特定の者を指定して自分の応対をさせることや、特定の者を出勤させないことを繰り返し求める行為

④ 宿泊予定者が、宿泊サービスの従業員に、土下座などの社会的相当性を欠く方法による謝罪を繰り返し求める行為

⑤ 泥酔し、他の宿泊者に迷惑を及ぼすおそれがある宿泊者が、宿泊サービスの従業員に、長時間にわたる介抱を繰り返し求める行為

⑥ 宿泊サービスの従業員に、対面や電話、メールなどにより、長時間にわたって、又は叱責しながら、不当な要求を繰り返し行う行為

⑦ 宿泊サービスの従業員に、要求の内容には正当性があるが、暴力や暴言などを用いて要求し、要求方法に問題があるやり方で繰り返し行う行為

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上記7つの行為は、以前も一部の宿泊客からは見受けられ、宿泊サービス(ホテル)業の営業者からは一部の宿泊客による迷惑行為、カスタマーハラスメントとして対応されてきたものですが、改正前の法律では宿泊拒否ができる条件が明確になっていませんでした。

これらの行為が、改正法により法的に宿泊拒否の対象となり、宿泊サービス業の営業者から宿泊拒否の対応を取ることができるようになったことは、営業者にとっても、利用規則をきちんと守って宿泊している利用客にとっても喜ばしいことと言えます。

(ウ)宿泊サービス(ホテル)業の対応の順序は?

特定の行為に対し宿泊拒否に対応ができるようになったとはいっても、宿泊しようとする者から上記に該当する要求を求められた場合、直ちに宿泊を拒むことはできません。

まずは「そうした要求には応じられないが、宿泊自体は受け入れること」を説明することになります。そのような説明をしても、なお同じ要求をされる場合は、宿泊を拒むことができるという流れになっています。

(エ)宿泊拒否事由には当たらない行為の具体例

宿泊拒否が妥当であると判断されうる特定要求行為に当たるかどうかについて、正しく判断するためには、特定要求行為に当たる場合だけではなく、当たらない場合も知っておくとよいでしょう。政府広報でも特定要求行為に当たらない、つまり、宿泊拒否ができない場合についても、以下のような具体例を挙げています。

①障害者が宿泊に関して、障害者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行等の除去をしたり、合理的な配慮を求めること

②医療的な介助が必要な障害者、重度の障害者、オストメイト、車椅子利用者、人工呼吸器使用者の宿泊を求めること

③介護者や身体障害者補助犬の同伴を求めること

④障害者が障害を理由に不当な差別的取扱いを受けた場合にその謝罪等を求めること

⑤障害のために状況に応じた声の音量調整ができないで従業員に声をかけるなど、その行為が障害の特性によることがわかる場合

⑥ホテルや旅館側の故意又は過失によって、宿泊予定者又はその家族等の関係者が損害を被ったため、何かしらの対応を求めること。もっとも、要求の内容が妥当であっても、要求の手段や態様が不相当であれば、この行為は合理的な理由を欠くものとなって特定要求行為となることもあります。

上記6つの行為の具体例のうち⑥ 以外の行為が、障害を持つ方からの要望への対応に関するものです。障害を持つ方と健常者との分け隔てのない社会を作り、生活していくのが共通の認識となっている現代社会では、障害者からの上記要望については宿泊拒否をする合理性は無いので、特定要求行為に当たらないとされているのです。

(3)改正の要点2 「感染防止対策」への協力規定

不特定多数の者が利用する宿泊サービス(ホテル)施設においても、感染症の拡大防止の観点から必要な対策、例えば、換気の徹底等を講じられることが望ましいといえます。

そこで、今回の改正で、営業者は法律上の根拠によって協力の求めを行うことをできるようにし、宿泊しようとする者は、営業者から感染防止対策への協力の求めがあったときは、正当な理由がない限り、その求めに応じなければならないこととなりました。

もともと、営業者は宿泊サービス(ホテル)施設について宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない義務を負っています(旅館業法第4条第1項)。その義務を果たすために法令上の根拠を持って宿泊客に対して感染防止対策への協力の求めをできるようにする必要があります。

今回の改正による「感染防止対策」への協力依頼の規定は、そのような営業者の義務を実際に果たすための担保となるでしょう。

もっとも、宿泊者が営業者からの感染防止対策への協力の求めに応じなかったとしても、それだけでは前述のような特定要求行為などの宿泊拒否事由に該当しない限り、営業者は非協力者に対し、宿泊拒否はできません。さらに、宿泊者に罰則が科されるものでもありません。

なお、 新型コロナウイルス感染症は、令和5年5月8日をもって5類感染症に移行しているため、旅館業法における特定感染症には該当しません。

 

3 宿泊サービス(ホテル)業の特徴とよくある労務トラブル、知っておくべきポイント

(1)準備時間や待機時間の賃金請求(「労働時間」の該当性)

(ア)24時間365日の宿泊サービスを提供するという特徴

旅館・ホテルは一般的に24時間365日稼働しているため、従業員の労働時間が課長になりがちで、かつ事業者側の労働時間管理もおろそかになりがちです。そのため、事業の性質上「労働時間」に関する労務トラブルが多くあります。

(イ)労働時間に関する宿泊サービス(ホテル)業についての最近の裁判例

例えば、始業時間前の準備時間や、実作業に従事せずに待機していた時間は労働時間に当たるのでしょうか。これらの点が争われた裁判例の一つ(東京地判令和3年11月29日労判1263.5.ホテルステーショングループ事件)をご紹介します。

【事件の概要】

Xはホテルを経営する会社であり、その従業員Yは、Xの経営するホテルの客室清掃を担当していました。Yの所定の始業時刻は午前10時でしたが、この時刻より前に出勤し客室清掃やその準備作業を行っていました。また、Yは所定の休憩時間とされていた45分間についても、他の社員から連絡を受けたらいつでも対応できるように控室で待機していました。そこで、YはXに対し、❶ 始業時間前の作業ないし準備時間や、❷ 清掃作業等の実作業に従事しない待機時間も、業務に必要であって「労働時間」に当たるからその分の賃金を支払うように請求した事件です。

【結論】労働者勝訴

判決では、上記❶、❷ともに「労働時間」に当たり、かつ業務に必要であれば、法律に基づいて賃金請求が認められる、と判断されました。

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【知っておくべきポイント①~準備時間や待機時間の賃金請求~】 

待機時間も「労働時間」に該当

営業者が気を付けなければいけない「労働時間」とは?

 

では、「労働時間」とは、どのような時間を言うのでしょうか。

判例は、労働基準法上の「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいうとしています。

 

そこで、労働者の行った行為が、

使用者の指揮命令下にあり(業務の拘束性)

会社にとって必要な業務である(業務の必要性)

と判断されれば、❶ 始業時間前の作業ないし準備時間や、❷ 清掃作業等の実作業に従事しない待機時間でも労働時間に該当するので、賃金の請求が認められることになります。

裁判所の判断

ホテルステーショングループ事件の判決では、「労働時間」について、以下のような判断をしました。

まず「業務の拘束性」について、始業時間前の準備作業に関しては、Xは、Yのそのような準備作業を把握したうえで黙認し業務遂行に利用していたとみて、Xの包括的で黙示的な指示の下で行われていたとしました。

また、待機時間についても、Yは休憩時間中にいつでも仕事ができるように待合室で待機しており、労働から解放されていなかったと判断しています。

 

次に「業務の必要性」について、客室清掃のためにYがタオルを畳んだり、それを客室へ運んだり、ベッドシーツや枕カバーを一部屋ずつ組にするといった客室清掃に必要な準備作業も、業務の性質上、ホテルの業務遂行そのものであるから業務の必要性があるとしています。

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以上のように、宿泊サービス(ホテル)業では、上記のように労働時間について問題が発生しうるほか、それ以外にも様々な法律問題が生じる可能性があります。これらの問題に適切に対応するためには、営業者側が労働法規を理解し、適切な労務管理を行うことが求められていると言えるでしょう。

(ウ)繁忙期の休暇取得

① 繁忙期となる土日祝日の休暇申請について

宿泊サービス(ホテル)業について、一般に平日よりも土日祝日が繁忙となるという特徴があります。そこで、就業規則により1年単位の変形労働時間制を採る等し、土日のどちらか一方を従業員の出勤日としているホテルや旅館も多いのではないでしょうか。

では、そのような繁忙期である土日や休日などに、それらが就業規則上勤務日とされている従業員から休暇申請があった場合、使用者は繁忙等を理由に従業員の休暇申請を拒むことはできるのでしょうか。

 

【知っておくべきポイント②~年次有給休暇取得の権利】

労働基準法39条5項では、従業員に年次有給休暇を取る権利が定められています。

労働基準法39条5項

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。

ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

営業者としては、繁忙期なのだから働いてほしいというという気持ちがあるかもしれません。しかし、39条5項で定められているように、従業員の休暇申請に対して、原則として営業者はその休暇申請を拒むことはできません。

判例も、従業員がその有している休暇日数の範囲内で休暇の始期と終期を定めて休暇の時季指定(休暇申請)をした場合には、営業者が労基法39条5項但書に定められている休暇取得の時期変更権を行使しない限り、従業員が休暇の時季指定をしたことによって、年次有給休暇が成立するとしています。

そのため、ホテルや旅館の使用者としては「従業員の休暇申請を承認していないから、年次有給休暇を取ることは認められない。」と主張することはできません。

 

【知っておくべきポイント③~営業者の休暇取得の時季変更権】

営業者が時季変更権を行使できる「事業の正常な運営を妨げる場合」とは?

そうはいっても、営業者としては、どうしてもその従業員に休日勤務をしてもらわなければならない場合もあります。このような場合、労働基準法39条5項但書では「事業の正常な運営を妨げる場合」には、営業者に対して休暇取得の時季変更権の行使が認められています。

 

宿泊サービス業の事案ではありませんが、「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかが争点となった判例では、他の従業員の休暇取得・欠員等により人員が不足する場合に時季変更権の行使を認めているものがあります。

新潟鉄道郵便局事件(最判昭和60年3月11日判決 労働民例集28巻3号101頁/判例時報854号112頁)

 

【事件の概要】

鉄道郵便局の職員が年次有給休暇の申請をしたところ、その日は定員を欠いて業務に支障を生じることを理由に鉄道郵便局が時期変更権を行使しました。

しかし、職員はそれを無視して当日に欠勤したので、鉄道郵便局は職員に対して懲戒処分をしました。これに対して職員は、処分の取消をするために提訴しました。

 

【判決の概要】会社側勝訴

使用者が時季変更権を行使できるのは、①使用者にとって予期できないほどの数の従業員が同じ時季の休暇を申請し、②それにより事業の正常な運営に支障を生ずる場合でなければならないとしました。

そして、事業の正常な運営が妨げられる場合であるかどうかを判断するにあたっては、休暇申請をした従業員が指定した休暇の時季や、その従業員が担当する事業の性質、内容、代行者を配置する難易などの事情を総合的に考慮するとしました。また、事業に支障が生ずるか否かは、休暇申請をした従業員の所属する部署を単位として判断するのではなく、企業が行う事業全体の運営に支障が生ずるかで判断しなければいけないとしました。

本件では、結果的に職員が出勤しなくても事業に支障はありませんでしたが、だからといって鉄道郵便局が行使した時季変更権の合理性は否定されるものではなく、その当時の客観的な状況において合理的な予測判断に基づいて「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たると判断すればよいとしました。

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② 宿泊サービス(ホテル)業における「事業の正常な運営を妨げる場合」とは

宿泊サービス業について考えてみると、他の従業員の休暇・欠勤の状況により、他の従業員の人員確保が難しく、そのため宿泊サービスの提供が困難となる場合には、「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たると考えられます。

その場合、従業員の欠員により、ホテルや旅館での考えうる支障が事業の正常な運営を妨げるか、通常の配慮をすれば代替要員を確保することが可能かどうかを具体的、客観的にみて検討することが必要になります。

 

例えば、

・宿泊客が多く満室予約状態になっており、従業員が休暇を取得することで業務が回らない恐れがあること

・宿泊客が多い連休などの繁忙期で、以前から他の従業員から休暇申請が出ており、これ以上の休暇申請があると、現在のシフトでは正常に業務を運営することが困難であること

・休暇申請を出す従業員が、料理長で料理作成を仕切るなどの役割を担っており、代替要員の確保が容易でないなどの事情があること

などの状況が考えられるでしょう。

 

③時季変更権行使の方法

時季変更権の行使の方法は、変更後の日にちを具体的に指定して行う必要はありません。単に「別の日にしてください」と伝える方法によっても認められます。

 

④ 時季変更を行使する上での注意点

もっとも、時季変更権は無条件に行使できるわけではありません。

 

判例でも、営業者の時期変更権の行使について、「(従業員から)年次休暇の時季指定がされた場合であっても、使用者が、通常の配慮をすれば勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能であるときに、休暇の利用目的を考慮して勤務割変更のための配慮をせずに時季変更権を行使することは許されない。」と判示しています(最判昭和62年7月10日 弘前電報電話局事件 労働判例405号11頁/訟務月報29巻9号1662頁)。

 

使用者側としては、宿泊サービスの業務に必要な人員を確保する等、できるかぎり従業員が希望した時季に休暇を取れるように状況に応じた配慮をする努力が必要であるといえるでしょう。

 

4 宿泊サービス(ホテル)業界に生じやすい問題への弁護士による法的対応

ホテル等の使用者と従業員との間には、上記のような労働問題のほかにも、様々な問題が発生することが考えられます。そして、各法律問題は複雑なものが多くなっております。

そのような宿泊サービス(ホテル)業に生じやすい法律問題が発生した場合に、営業者の方がご自身で解決することが困難な場合は少なくありません。

そのような法律問題が発生した場合や今後のトラブルを未然に防止するためにも、法律の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

当事務所では、宿泊サービス(ホテル)業の労務トラブルの解決実績が多数あり、また、当事務所には社会保険労務士の資格を有する弁護士も多数在籍しており、トラブルを未然に防ぐために法定帳簿(就業規則等)の作成等に関するアドバイスも行う等、様々な法律問題に対する予防策も含め、豊富な経験と専門知識を活かした解決策を提供しております。

当事務所では、初回相談を原則として無料で受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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